VOCに関するQ&A

Q…最近のVOCの測定での指針値のオーバーは、建材よりもむしろ接着剤、塗料、及び床ワックスが要因となることが多いとされています。これらの使用に当たって注意すべきことは何かを教えて下さい。
 
A…接着剤、塗料、及び床ワックスの使用に当たって注意すべきことを纏めると、以下に示すものとなります。

接着剤について:住宅内装の現場における接着によって含まれる化学物質が異なることから、各製品に応じた注意が必要です。基本的には、使用する接着剤によって細かい点が異なることから、接着剤の技術資料、成分表、化学物質等安全データシート(MSDS)等を入手して、施工方法や使用方法、注意点を十分理解することが大切です。接着剤の選択のポイントとしては、以下のものとなります。

 ①種類と用途を間違えないこと。
 ②リフォーム時には、溶剤形の接着剤は接着剤中の溶剤が残存することがあるので、できるだけ使用を避けること。
 ③接着剤の選定と施工にあたっては、事前に十分な吟味を払うこと。
 ④子どもが利用する施設やアレルギー体質、化学物質に過敏な人が使用する建物では、特に接着剤の選定と施工には十分に留意すること。

塗料について:塗料の種類は大別して、油性系と水性系に分けられます。油性系はその種類毎に成分が異なり、トルエン・キシレン等芳香族炭化水素系の溶剤を使用した塗料は、室内塗装にはできる限り避けることが望ましいでしょう。現在、シックハウス対策として、住宅の内部・外壁用には水性系のエマルション塗料が多く使用されています。やむを得ず油性系の塗料を使用する場合には、使用者や管理者に換気の必要性等について十分説明することが大切です。また、業界団体である日本塗料工業会では、ホルムアルデヒド規制自主基準要領を定め、適正と判断されたものに対し、ホームページで公開するシステムを作っています。なお、環境省において大気汚染防止の観点からVOCの規制が強化され、塗料業界全体でのVOC排出量の抑制に向けた取り組みも始められています。

床ワックスについて:床ワックスは、その主成分から大きく「蝋タイプ」と「樹脂タイプ」に分けられます。「蝋タイプ」はさらに油性と水性に分けられます。「蝋タイプ」では、塗った後に磨き(カラ拭き)が必要になります。一方「樹脂タイプ」は塗った後、乾かすだけでツヤが出ます。住宅や学校等では、床保護等のため、床のワックスがけを定期的に行われることが一般的です。この床のワックスの成分には、トルエものがあります。使用される時は、製品表示を確認し、原因物質を含んでいるものは原則使用しないようにし、配合成分等が未表示の製品については、製品安全性データシート(MSDS)を製造業者等から取り寄せ、必要に応じ、学校薬剤師等の指導助言を受け、適切なワックスを使用することが基本といなります。表1に現在販売されています床ワックスの種類とそれらの特性を纏めて示してあります。

 
  水性ワックス 天然または合成のろう(ワックス)を乳剤(エマルジョン)にしたもので、塗布すると水分が蒸発して、床面にワックスの薄い皮膜ができる。
  油性ワックス  天然または合成のろう(ワックス)を石油系の溶剤でバター状にしたもので、塗料を施してない木質の床によく適し、材質を強化し、美しいツヤを出す。
  水性樹脂  アクリル樹脂等の合成樹脂を原料とした乳剤で、現在のビルに多いビニールタイルなぎの床によく適する床維持剤である。水性樹脂の皮膜は、ワックス(ろう)の皮膜とは比較にならないほど固く強じんで耐久性があり、長く塗り直す必要がないなど、多くの優れた点がある。
  水性半樹脂  水性ワックスに樹脂を配合してその欠点を補うように改良したものである。性質は配合によっていろいろですが、水性ワックスと水性樹脂の中間で、使い易さが特徴である。
  床シール剤 水性ワックスに樹脂を配合してその欠点を補うように改良したものである。性質は配合によっていろいろですが、水性ワックスと水性樹脂の中間で、使い易さが特徴である。
  フロアオイル 塗料を施してない木質の床に塗布する油で、木質を強化・保護し、ほこりが立つのを防ぐ効果があるので、木の床等に適する。
 表1 床ワックスの種類とそれらの特性 

(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…VOC濃度の指針値には、ppmとμg/m3との二つの単位がありますが、これらの間の関係を教えて下さい。
 
A…気体濃度の表示に用いられる単位としては、[mg/m3]と、[ppm]の二つの単位があります。mg/m3が重量で表示されているのに対し、ppmは体積比で表示されています。ppmとは「perts per million」の略語で、100万分の1という意味になります。厚生労働省のホルムアルデヒドの室内濃度指針値では、100μg/m3と0.08ppmとの2種類の指針値が示されています。 重量表示では100μg/m3=0.0001g/m3のことで、感覚的にイメージしやすいのですが、0.08ppmと書かれても、単位に慣れないと解りにくいと思います。 ここで1ppmとはどんなものかを具体的に説明します。1m×1m×1mの大箱1m3の空間(100万cm3)の中に、1cm×1cm×1cmの1cm3の小箱(気体)が存在します。小箱(気体)の体積比は100万分の1になっていますので、気体濃度は1ppmになります。ですから濃度が0.08ppmとは、さらに小箱を100分割した内の8個分の体積の気体が大箱の中に存在する状態が0.08ppmになります。
 つぎにmg/m3からppmへの換算について説明致します。換算に当たっては、つぎに示す理想気体の状態方程式を使います。通常体積比ppmの換算に当たっては、温度は25℃、気圧は1気圧としています。
 

PV=m/M×RT (1)
記号 項目 単位
圧力 気圧 1
体積 リットル(ℓ) 計算で求める値
m ホルムアルデヒドの質量 g 0.0001
M ホルムアルデヒドの分子量 g 30(HCOH:1+12+16+1)
R 気体定数 - 0.0821
T 絶対温度 K 25+273.15=298.15
 表1 状態方程式に含まれる各記号の定義 


 それでは具体的に空間1m3中に存在する100μg=0.1mg=0.0001gのホルムアルデヒドの体積を求めと、つぎのようになります。

V=w/M×RT/P=(0.0001/30)×0.0821×298.15/1=0.00008159ℓ

 これが空間1m3中にあるホルムアルデヒドの体積になります。ですから1m3は1000 ℓです。単位を揃えて空間1m3に対するホルムアルデヒドの体積比を計算しますと、

V/m3=0.00008159 [ℓ] /1000 [ℓ] =0.08159×10-6≒0.08ppm (2)

となります。ここでは温度25℃として計算しましたが、温度が変わると、当然ながら上式(2)の値は変わります
(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…VOCの測定結果は、夏と冬、竣工後の経過日数、および換気設備の稼働の有無によって異なるものでしょうか?
 
A…以下のように、回答します。
(1) VOCの室内の濃度は、夏と冬では大きく異なります : 合板やパーティクルボードなどの材料からのホルムアルデヒド放散量は、温度が上昇すると増加します。
 10℃の温度変化で放散量は2倍になるとも言われています。また、図1に示す国土交通省等による「室内空気対策研究会」が平成12年に行った実態調査によると、築1年以内の住宅(約2800戸)の場合、測定時の室温が25℃を超えるグループ(448件)では室内空気中のホルムアルデヒドの平均濃度が0.091ppmと指針値を超えていたのに対し、15℃以下のグループ(222件)では0.055ppmでした。同一の住宅の夏冬比較ではありませんが、この結果からみると実際の生活状態では夏の濃度は冬の1.5倍~2倍程度と推計できます。ですから測定結果はそれがどんな温度条件や季節に測定されたかを前提に判断する必要があります。
 

 

図1 室温の違いによるホルムアルデヒドの濃度
 

(2)測定時期によっても濃度は異なります: 建材、塗料、接着剤などに含まれる化学物質は施工完了直後が最も多く放散し、日数がたつと放散が少なくなっていくのが普通です。どのくらいの割合で少なくなるかは、化学物質の種類、化学物質の含まれる部位(建材の内部か表面かなど)、部屋の温度や換気条件などによって変わってきます。一般的に言えることは、ホルムアルデヒドは比較的緩やかに減ってゆき、トルエン、キシレンなどのVOCは最初の1~2週間でかなり急激に放散量が低減するということです。住宅性能表示制度では濃度測定を居室の内装工事の完了後としていますが、塗装工事等が完了した直後に測定をすれば、濃度が高くなる可能性があります。
 
(3)換気設備の稼働の有無によっても濃度は異なります:住宅性能表示制度の濃度測定では、化学物質の採取を行う前に全ての窓や扉を開放して30分換気した後に、屋外に面する窓や扉を閉鎖し、5時間以上維持した状態で採取することを基準としていますので、一般の生活で窓を開けた時のような通風の影響はありません。しかし、通常の生活状態での稼動を前提とした24時間換気設備はその運転の有無により濃度に大きく影響しますので、測定時に設置されている場合は連続して稼動させてよいことになっています。
(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…ホルムアルデヒドの放散量は、温度及び湿度の変化によってどの程度変わるものでしょうか?
 
A…図1は、ホルムアルデヒドの放散量と温度との関係を示したものです。例えば温度が30℃におけるホルムアルデヒドの放散量は、温度20℃の時の約2倍となります。また図2は、学校における同一の教室での温度差に基づくホルムアルデヒドとトルエンの濃度の変化を示したものです。室温の違いで放散量が大きく異なる事がわかります。ですから、ホルムアルデヒドを含めたVOCの指針値のオーバーは、測定時の室内の温度が、大きな要因であると考えられますので、VOCの測定時での温度の確認は、極めて大事になります。また室温が30℃を超えると、室内の施工材等からのVOCの放散を促進させ、早急に軽減させる、いわゆるベークアウトを行っていると同じ状態となります。したがって、ベークアウトを行うと、例えVOCの濃度が指針値の2倍程度であっても、1~2週間程度で指針値以下とすることが出来ます。ベークアウトはVOCの濃度を下げる上で極めて有効な手段となります。さらにはVOCの濃度を下げるには、換気は極めて重要な要素となります。そのために換気回数が0.5回/hをクリアする換気設備がもとめられことになるわけです。

 

図1 ホルムアルデヒドの放散量と温度との関係



(a)ホルムアルデヒド


(b)トルエン
図2 同一の教室での温度差に基づくホルムアルデヒドとトルエンの濃度
 また、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドは、水溶性であるためにとてもよく水に溶けるという性質を持っています。ですから、室内の水蒸気量が多くなると、ホルムアルデヒドの放散量が多くなり、濃度が高くなります。図3はホルムアルデヒドの濃度と相対湿度との関係を示したものです。同一温度で、相対湿度が高くなるとホルムアルデヒドの濃度が高くなることがお分かり頂けると思います。例えば、温度20℃で-相対湿度が50%から90%になると、ホルムアルデヒドの濃度は1.5倍となります。
(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…新築物件のTVOCの測定を業者に依頼したところ、表に示すものとなり、高い箇所では暫定基準値400μg/m3の30倍近いものとなっていました。どのように対応したら良いのでしょうか?

物質名 指針値 測定箇所 A 測定箇所 B 測定箇所 C
TVOC 400μg/m3 11000μg/m3 9100μg/m3 5600μg/m3
トルエン 260μg/m3 110μg/m3 73μg/m3 65μg/m3
キシレン 870μg/m3 460μg/m3 410μg/m3 260μg/m3
エチルベンゼン 3800μg/m3 530μg/m3 480μg/m3 330μg/m3
表 TVOC等の測定結果

A…以下のように回答を致します。 

  1. 必須VOCの中で、同定したVOCは、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの3物質と極めて少なく、TVOCの測定結果の信頼性が低い。少なくとも10種類程度のVOCの同定が必要である。

  2. 未同定のVOCに関しては、それぞれのピークに関して面積を求めてトルエンの検量線で濃度に換算し、トルエン換算量(μg/m3)で表しますが、測定されたTVOCの値が余りにも大きい事から、このようにしているどうかの疑問が持たれる。

  3. 今回の測定で同定したトルエン、キシレン、エチルベンゼンの3物質と、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドを除く厚生労働省が出している残りのVOC(8物質)の指針値の合計は1165μg/m3である。仮にこれらすべてのVOCが指針値の数倍程度オーバーしたとしても、今回測定された10,000μg/m3を超えるTVOCの総量に遙かに及ばない。そのために測定結果に疑問が持たれる。

  4. これまでの私共が行った数百件のVOCの測定では、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドを除く他のVOCは殆ど検出されていない。これらのことを考えると、今回の10,000μg/m3を裕に超えるTVOCの測定結果は、どのVOCに基づくものかを明らかにする必要が有る。それによって、今回の測定結果の妥当性が立証されることになる。

  5. これまで数多く行われてきたTVOCの測定結果から判断しますと、極めて異例である言わざるを得ません。(1)~(4)に述べてように測定並びに評価方法に疑問が持たれます。それで先ず、これらの疑問に関して測定・分析された方に問い合わせを行い、確認することをお勧め致します。つぎにTVOCの測定を行って頂ける機関を新たに見つけ、再度TVOCの測定を行うことが必要であると考えられます。TVOCの測定事業を行っている機関は、国内に幾つかありますので、ネットで検索すると出てきます。

 つぎにTVOCの低減に対して、以下のコメントを致します。VOCの低減化に当たっては、二つの方法があります。一つは換気システムを最大流量で稼働させて(換気回数0.5回/h以上)、室内換気を行うことです。他の一つはベークアウトを実施することです。この中でベークアウトは、VOCの低減に極めて有効な方法であり、指針値の数倍程度と濃度が高い場合においても、1ヶ月程度で指針値以下に低減させることが出来ます。計画中の再度のTVOC測定においても、依然として暫定基準値よりも大きい場合には、是非ともベークアウトを実施することをお勧め致します。なお、具体的なベークアウト法に関しては、日本VOC測定協会に問い合わせ下さい。
(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…「シックハウス新法」では、室内の換気回数は0.5回/hとされています。 この換気回数0.5回/hは必要不可欠と考えるべきなのでしょうか? また換気回数は、場合によってユーザーは調整しても問題はないのでしょうか?
 
A…国土交通省等が編集した「建築物のシックハウス対策マニュアル」では機械換気設備の能力としては0.5回/hに相当する換気量を確保した上で、冬季において気密レベルが2cm2/m2以下の住宅の場合には0.4回/h、2cm2/m2超える住宅では0.3回/hに相当する機械換気量まで低減可能な風量調整スイッチを0.5回/h運転用スイッチに加えることも出来るとしています。知っての通り、換気回数の0.5回/hは室内の炭酸ガスの濃度に基づいて定められたものです。そのために少人数の家族構成では、換気量が過大となります。居住する人数で換気量を調整すべきと考えます。
 また室内のVOCの濃度は、これまでの多くの測定事例から竣工後4~6ヵ月で大部分が放散される事が分かって来ています。さらには例え竣工時でのVOCの濃度がかなり規制値をオーバーしても、4~6ヵ月でほぼ規制値をクリアするレベルまで下がることが分かって来ています。これらのことから、以下に示す理由から竣工1年を過ぎた段階で、冬季間での換気回数を0.3回/h程度まで下げることに関しては、問題ないと考えています。
 
(1)住宅のエネルギの消費量の削減を図る上での一つの有効な手段となる。
(2)室内のVOCに関しても測定デから問題がないことが立証されている。
(3)給気による冷気感と、室内の過乾燥を緩和出来る。
(4)室内結露の発生は、これなでの測定データでは、殆ど皆無である。
 
 また多くのビルダーは、入居時に設定した換気量を変えないようにユーザーに申し伝えます。ユーザーは、その根拠があまり分からないままで遵守しています。設定された換気量は本当に変えてはいけないのでしょうか。換気による熱損失、室内の過乾燥、居住者数等に対応する形で、換気量の調整は当然ながら必要です。
 換気量の調整の必要性をユーザーに理解して頂き、時と場合に応じた調整を任せることが大切です。もしも換気量を調整することで、窓や壁の表面結露の発生、抜けきれない生活臭、新鮮さがあまり感じない室内の空気質等の問題が生じた場合には、居住者の判断で換気量の調整を臨機応変に行えば良いのです。
 換気量を自由に調整するには、無段階のコントローラを有する換気設備が基本となります。また換気量の調整は、実測された換気回数は0.5回/hを確保されていることが大前提です。このことからも、施工後の換気量の検証は必要不可欠なのです。

(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…タバコを吸った場合に発生する化学物質は、どのような種類のものとなるのでしょうか。またタバコから発生する有害物質を除去する上では、換気量をどの程度必要とするのでしょうか?
 
A…表1にタバコ1本に含まれる主な有害物質を示してありますが、タバコの煙には現在分かっているだけで、4000種類以上の化学物質が含まれていることが判明しています。そのうち有害であることが分かっているものだけでも200種類を超えています。なかでも、「ニコチン」、「タール」および「一酸化炭素」が三大有害物質とされています。また人に対して発がん性が認められるベンゼンをはじめ、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのVOCと称される多くの芳香族化合物が含まれていることも分かっています。
 またタバコの煙には、喫煙者が吸い込んで吐き出す主流煙と、吸い込まれずに周りに流れていく副流煙があります。タバコが有する有害な化学物質は、主流煙よりも副流煙に多く含まれていることが分かっています。図1は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレンp-キシレン、スチレンの7物資に関して、仙台市衛生研究所が調べたタバコ1本に含まれる主流煙と副流煙に含まれる化学物質の割合を示したものです。いずれの化学物質も、主流煙よりも副流煙から放出される量が格段に多いことが分かります。さらにその発生量は、例えば最も大きいトルエンでは551µgとなっています。このトルエンの濃度は6畳間でタバコ1本を喫煙したと仮定すると、5.4ppbとになります。トルエンに対しての厚生労働省の指針値は70ppbですので、タバコ1本が放散するトルエンの量は、指針値の1/10以下となっています。ただ喫煙する在室者が増たり、十分な室内換気が行われない場合には、トルエンの量は増加し、室内の空気環境はかなり悪化することになります。

たばこ一本中の主な有害物質
  有害物質名 主流煙 副流煙
発癌物質(ng/本) ベンゾ(a)ピレン 20~40 68~140
  ジメチルニトロソアミン 5.7~43 680~820
メチルエチルニトロソアミン 0.4~5.9 9.4~30 
N一ニトロソノルニコチン 100~550  500~2750
ニトロソピロリジン
5.1~22 200~380
キノリン 1700 18000
メチルキノリン類 700 8000
ヒドラジン 32 96
2‐ナフチルアミン 1.7 67
4‐アミノビフェニール 4.6 140
0‐トルイジン 160 3000
その他の有害物質(mg/本) タール(総称として) 10.2 34.5
ニコチン 0.46 0.27
アンモニア 0.16 7.4
一酸化炭素 31.4 148
二酸化炭素 63.5 79.5
窒素酸化物 0.014 0.051
フェノール類 0.228 0.603
表1 タバコ1本に含まれる主な有害物質

図1 タバコ1本に含まれる主流煙と副流煙に含まれる化学物質の割合(出展:仙台市衛生研究所報)

 つぎに室内でタバコを吸った場合、発生する有害物質を除去する上での換気量について説明致します。住宅等における汚染物質は多岐に渡っていることから、指標としての設計基準濃度も極限定されたものとなっています。表2は、単独指標としての代表的な汚染物質と設計基準濃度を示したものです。

 
汚染物質 設計基準濃度  備考
二酸化炭素 1000ppm ビル管理法の基準値
一酸化炭素 10ppm ビル管理法の基準値
 浮遊粉塵 0.15mg/m ビル管理法の基準値
二酸化窒素 210ppb WHOの基準値
二酸化硫黄  130ppb WHOの基準値
ホルムアルデヒド 80ppb 厚生労働省の基準値
ラドン 150Bq/m EPAの基準値
アスベスト 10本/リットル 環境庁の基準値
 表2 代表的な室内汚染物質の設計基準濃度

 一方タバコは種々の汚染物質を発生させるが、それら汚染物質の種類や発生量は完全に分かっているわけではありません。空気調和・衛生工学会規格(HASS 102―1996)によりますと、現在のところ喫煙1本当たりの汚染物質とその発生量は表1に示すものとしています。

 
汚染物質 一酸化炭素 二酸化窒素 浮遊粉塵
発生量 0.0006m/本 0.0022m/本 19.5mg/本
 表3 喫煙1本あたりの汚染物質とその発生量

現在のところ、喫煙に関する必要換気量の評価に当たっては、表3に示す一酸化炭素、二酸化炭素、および浮遊粉塵の3物質に対する必要換気量を求め、それらの中での最大値を基本必要換気量としています。

(1) 二酸化炭素に対する必要換気量
 必要換気量は、つぎに示す関係式で評価することが出来ます。

上式に、二酸化炭素(汚染物質)の発生量 0.0022m3(表2に示す)、二酸化炭素許容濃度1000ppm(1000×10-6[m3])、 新鮮空気の二酸化炭素濃度350ppm(350×10-6[m3])を代入すると、必要換気量は次のようになります。



(2) 一酸化炭素に対する必要換気量
 式(1)に、一酸化炭素(汚染物質)の発生量0.00006m3/本(表2に示す)、一酸化炭素許容濃度10ppm(10×10-6[m3])、新鮮空気の一酸化炭素濃度0ppmを代入すると、必要換気量は次のようになります。



(3) 浮遊粉塵に対する必要換気量
 式(1)に浮遊粉塵の発生量19.5mg/本(表2に示す)、浮遊粉塵許容濃度0.15mg/m3、 新鮮空気の浮遊粉塵濃度0mg/m3を代入すると、必要換気量は次のようになります。


 したがって、表3に示す一酸化炭素、二酸化炭素、および浮遊粉塵の3物質に対する必要換気量の中での最大値を基本必要換気量とすれば、130m3/hとなります。このように、タバコを一本吸ったら有害物質などの希釈のために130m3/hの換気が必要とされることになります。30坪一戸建て住宅の一時間当たりの必要換気量と同じものとなっています。この130m3/hなる換気量は、あくまでも1時間に1本のタバコが吸われる場合であって、もしも二人が1時間に各々が1本のタバコを吸う場合や、一人が一時間に2本のタバコを吸う場合には、換気量は2倍となる260m3/hが必要となります。ですから、シックハウス新法に規定されている換気回数0.5回/hの換気設備では、タバコによる有害物質を希釈することは殆ど出来ないと言わざるを得ません。このようなことから、室内でタバコを吸う場合には、稼働しているレンジフードの前で喫煙し、タバコ発が発生する有害物質が周辺に拡散する前に、室外に排出させるしかありません。
  (回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

 

Q…ホルムアルデヒドと トルエンの経時変化は大きいものなのでしょうか? また、もし考えられる要因がございましたらご教授ください。
 
A…図1にホルムアルデヒド、図2にトルエンの経時変化を示してあります。100日経過後では、ホルムアルデヒドは1/2、トルエンは1/5に減衰する事が分かります。アルデヒド系は他のVOCに比べて、減衰の程度は小さいと考えられます。(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…基本的なことですが、GC(ガスクロマトグラフィー)で分離できるのは、VOCのみなのでしょうか? ガス状物質で有機化合物でないもの(たとえば、O2、NOX、CO2、COなど)のピークは現れてこないのでしょうか。そうだとしたらその理由をおしえてください。NOX測定については、GCとは全く別の原理で濃度測定しているようです。GCは有機化合物を分離するものなのでしょうか?
 
A…GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)は、ご質問にあるようにトルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物を分析するものです。ですから、COやCO2等の無機化合物の分析は出来ません。その根拠についてはGC/MSの原理を調べれば容易にわかりますので、ここでは詳しい説明は省略させて頂きます。(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…GC(ガスクロマトグラフィー)で分離したものを分析した結果、TVOC値を計算する際、トルエン換算を行うようですが、トルエン換算とは具体的にどのような理屈で各物質の係数が決まるのでしょうか。
 また、その時のTVOC値計算の際、通常は、n-ヘキサンからn-ヘキサデカンまでのVOCの合計をトルエン換算するようですが、物質を同定できなかったピークについてもTVOCに含めるのでしょうか。その場合、係数はどのように計算されるのですか。
 
A…TVOCの計算には、各種方法が提案されていますが、一般にはGC/MSで検出されたピーク値のうちのn-ヘキサンからn-ヘキサデカンの部分に存在するものについてのピーク面積を計算し、合計値をトルエンの濃度に換算し、トルエン換算値(μg/m3)として表します。
 より分かり易くに説明しますと、VOCはGC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)のカラムを通る間に各成分に分離され、これらはGC/MSの検出器で検出され、縦軸が濃度、横軸が保持時間のグラフの形で表示されます。そして、各VOCの保持時間は分かっていることから、ピークを示す各保持時間におけるVOCは特定することが出来ます。また、予め各VOCの標準物質とピーク面積との関係を示す検量線図を作成しておき、それらに基づいてVOCの定量的な評価を行ないます。
 ですから、TVOCの濃度は、各ピーク値の合計された面積を用いて、トルエンの検量線図からTVOCの濃度を評価します。そのためにTVOCの濃度は、トルエン換算と称されます。
 また、GC/MSで検出されたピーク値のうちのn-ヘキサンからn-ヘキサデデカンの部分に存在するものについてのピーク面積を計算し、合計値をトルエンの検量線で濃度に換算しますので、当然ながら、特定されないVOCも含まれることになります。(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)
 

Q…VOCの検査は建築物の居室が対象だと認識しているのですが,官公庁の建築物に設置している待合室についてはVOCの検査対象になるのでしょうか?
 なお、室内には換気扇等の設備はなく,出入口の扉が開放された状態で使用しています。また,待合室の使用状況は数時間続けて同一人物が使用することはありません。
 
A…シックハウス新法で規制の対象となる空間に関しては、下記のように記述されています。すなわち、「室内空気汚染による健康への影響は、住宅、学校等の特定の用途に限らず、建築物の利用者が継続的に居住、執務、作業等を行う室の全てにおいて生じるものであり、全ての建築物の居室を対象とする」となっています。このことを踏まえて、ご質問に対して下記のように回答を致します。

 (1)利用者が継続的居住、執務、作業等を行うものとすると言う立場に立つとすれば、官公庁の待合室は不特定多数の人が、継続的ではなく、短時間に使用することから、規制の対象外となり得るとも考えられます。

 (2)一方、規制の対象となる住宅以外の居室に関しては、以下のものが挙げられます。
 ①事務室:事務室、会議室、守衛室
 ②病院:病室、診察室、手術室、薬剤室、受付待合室など
 ③商店:売り場、休憩室など
 ④飲食店:客室、厨房など

 このように不特定多数の人が、継続的ではなく、短時間に使用する居室に関しては、通常は規制の対象となっています。
 以上のことから、官公庁の待合室もまた居室と見なされることから、規制の対象となるものと判断されます。その為にVOC検査の対象となり得るものと考えられます。
 私の判断も確定的なものではなく、曖昧さは否めません。もしもどうしても疑問が残る場合には、シックハウス新法に関わっている「国交省の住宅局建築指導課」等に問い合わせをし、確かめることを強く勧めます。(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)

Q…測定の規格値についての質問です。建築基準法に準じた数値(μg)と厚生労働省基準(μg/m3)の違いを教えて下さい。測定条件によっても数値が変わると思いますが、標準測定条件があれば教えて下さい。
 
A…(1)シックハウス関連法規は、建築基準法とその施行令によって、平成15年7月に改正・施行されたものです。その骨子は、ご存知の通り、以下のものとなっています。

 (イ)ホルムアルデヒドを発散する建材の等級規格と使用規制
 (ロ)クロルピリホスの使用の禁止
 (ハ)換気設備の設置の義務化

 この中で、ご質問のある『ホルムアルデヒドの数値』は、建築材料から1時間当たりの発散量を示すもので、この数値をもって、使用建材材料の区分を行なっています。例えば、F☆☆☆☆(通称フォースター)の材料のホルムアルデヒドの発散速度は、0.005mg/(m2h)以下と規定されています。言い換えると、表面積1m2の建築材料のから、1時間に0.005mg以下のホルムアルデヒドの発散量のものがF☆☆☆☆の材料となります。この様に国土交通省の建築基準法は、あくまでも建築材料から発散されるホルムアルデヒドの量を規定したもので、厚生労働省の室内空気質を定めたVOCの濃度に対する指針値とは、目的と意味がまったく異なるものです。なお建築材料からのホルムアルデヒドの発散量の測定は、JIS/JASに定められているデシケーター法で行ない、測定条件もかなり厳しく規定されています。

 (2)厚生労働省が出しているVOC(揮発性有機化合物)のガイドラインは、室内のVOC濃度の指針値を示すもので、例えば、ホルムアルデヒドの指針値は、100μg/m3となっています。このように厚生労働省のVOCに関する指針値は、室内の空気1m3に含まれるホルムアルデヒドの値をしめすもので、建築基準法での建築材料から発散されるそれとは、意味が全く異なるものです。現在のところ、VOCに対する指針値は、ホルムアルデヒド、トルエン等の13物質となっています。具体的なものは、インターネット等で容易に検索出来ます。

 (3)室内のVOCの測定と分析に関しては、種々のものがありますが、シックハウス問題に関する検討会の報告に基づく、標準的なものに準拠した方法で行なうのが一般的です。その測定法に関しては、日本VOC測定協会のVOC測定士資格試験用テキストに詳しく記載されていますので、其れをお読み下さい。とくにVOCの測定と分析に当たっては、簡易型の測定器が多く出回っています。この簡易型の測定器は、ホルムアルデヒドのみの測定であり、他のVOCの測定は出来ません。また其の精度も低く、目安的のものと考えて下さい。

 (4)以上述べた事を簡単にまとめると、以下に示すものとなります。 

    1. 国土交通省の建築基準法のそれは、建築材料からのホルムアルデヒドの発散量に対するものであり、厚生労働省のそれは、室内のVOC濃度の指針値を示したものです。其の為、両者における単位と値、および対象目的は、全く異なったものとなります。 
    2. 室内VOC濃度の測定法に関しては、ホルムアルデヒドのみに対して種々の簡易型測定器があるが、いずれも精度上問題があることから、一般的ではありません。其の為に、我々が行なっているアルデヒド類は高速液体クロマトグラフ法、他のVOCはガスクロマトグラフ質量分析法で行なうのが標準であります。

(回答責任者 日本VOC測定協会理事長 坂本弘志)