【日本VOC測定協会・技術シリーズ7】 2018.6.1

第2種換気における室内正圧と壁体への湿気侵入の危険性は

 まず第2種換気で生じる室内の正圧について説明致します。第2種換気で給気ファンに求められ必要静圧(換気経路に生じる総圧損)は、[外気取り入れ口から室内給気口までの圧損]と、[室内排気口から外部吐き出し口までの圧損]の総和となります。この場合の室内に生じる圧力(正圧)は、室内排気口から外部吐き出し口までの圧力損失にバランスする形で生じることになります。すなわち、室内に生じる正圧は以下に示すものとなります。

 この室内排気口から外部吹き出し口までの圧損は、具体的には排気グリルと排気フードによって生じるものです。このことをより分かり易く説明したものが図1です。すなわち室内からの空気の排出は、室内圧Paが室内の排気口から外部フード出口までの圧損Peにバランスする形で行われます。その結果、室内に生じる圧力(正圧)Paと、室内排気口から外部吐き出し口までの圧損Peが等しくなるのです。当然ながら排気経路の圧損Peは、用いる部材と排気量によって異なります。一般的には排気グリル1個当たりの流量25~30m3/hでは、大きくても10Pa程度です。したがって、第2種換気の場合での室内に発生する正圧は、10Pa以下と考えて良いことになり、これまで言われているような大きな正圧とはなりません。

図1 第2種換気で生じる室内正圧

 つぎに室内の正圧による壁体への湿気の侵入について説明します。第2種換気は、室内の正圧によって壁体に室内への湿気の侵入を促進させ、壁体内に結露を生じさせると言われて来ました。知っての通り、住宅の壁体への湿気の侵入の防止は、室内側の壁面に防湿・気密シートを施工することによって行われています。それでは、第2種換気で生じる室内の正圧による壁体へ浸入する水蒸気量は、どの程度のものとなるかを評価して見ます。壁体へ浸入する水蒸気の量は、つぎに示す算定式によって評価されます。

 

 ここで、式(1)に含まれる防湿・気密シートであるポリエチレンシートの透湿抵抗は、表1に示すものとなります。

  材料名    透湿抵抗
[m2・h・mmHg/g]
ポリエチレンシート
t=0.1mm
452
ポリエチレンシート
t=0.2mm
720

表1 防湿・気密シートの透湿抵抗

 また上述したように、第2種換気の場合での室内に発生する正圧は10Pa程度です。この室内の正圧10PaをmmHg(水銀柱)に換算しますと、標準大気圧760mmHgは1.0133×105Paとなることから、つぎのようになります。

 かかる条件の下で、式(1)に基づいて、厚さt=0.1mmのポリエチレンシートが施工された壁体に侵入する水蒸気の量を求めて見ますと、つぎのようになります。

 ここで、例えば床面積6.3m×9.9mなる建物の1Fの壁体に浸入する、1日当たりの水蒸気の量を求めると、つぎのようになります。

 したがって、第2種換気で生じる室内の正圧が10Pa程度では、殆んど防湿シートを通しての壁体内への水蒸気の浸入はないものと考えることができ、これまで言われて来た第2種換気は壁体の内部結露の発生の元凶とはならないことが分かります。